Yearly Archives: 2010
天才が生まれる日
「乙武さんは、他人に嫉妬とかしなそう」 最近、ツイッターでそんなことを言われました。 たしかに、僕自身が心から毎日を楽しめているので、 あまり他人をうらやんだりすることはありません。 でも、なかには、ちょっぴり例外も。 どうしてもその才能をうらやんでしまう、ふたりの友人がいます。 ひとりは、ドローイングアーティスト・JUNICHI(小野純一)。 彼がまだ小学生だった頃、NHKのドキュメンタリーで取り上げられた 彼の絵と、絵に対するこだわりを見せつけられた僕は、 すぐに彼に手紙を書いた。ラブレターだ。 その想いに応えてくれた彼とは、13歳という年齢差を越えて、 いまでも友情が続いている。 9.11直後、「何か平和のためにできることがないだろうか」という 僕の呼びかけに応じ、ふたりで作品をつくる機会にも恵まれた。 『Flowers』――JUNICHIが描いてくれたイラストのおかげで、 とても伝わる作品に仕上がった。 ふたりめは、染谷西郷。 FUNKISTという7人組のバンドでVOCALを務めているアーティスト。 日本人と南アフリカ人のハーフとして生まれた彼は、恋愛だけでなく、 人種差別や平和や人間愛についても、力のかぎり歌う。 そのストレートなメッセージ性と、彼の真摯な態度は、 聴衆の心をこれでもかとわしづかみにして、離さない。 マカオのライブハウスで初めて彼らのライブを体感した僕は、 その場ですっかり虜になってしまい、以来、5年間ほど、 ずっと彼らのライブに通い続けている。 ふたりに共通するのは、表現者としてこの上なく誠実であること。 あれこれ損得勘定をしてから動いてしまうことの多い僕からすると、 ふたりの作品に向かう姿勢は、心苦しいほどピュアに映るのだ。 僕自身、何らかのメッセージを伝えようとする表現者として、 彼らの存在はあまりにまぶしく、ときに嫉妬さえ覚えることもある。 そして、もうひとつの共通点。ふたりとも、9月17日生まれ。 つまり、今日が誕生日なのだ! 面識はないが、プロゴルファーの石川遼選手も、 なんと9月17日生まれ。なんか才能が生まれる日なのかも。 うらやましいほどの才能を持つ、ふたりの友人へ。 誕生日おめでとう♪
だから、僕は学校へ行く!(文庫版)
新宿区教育委員会の非常勤職員「子どもの生き方パートナー」として、新宿区立の小・中・養護学校を回った経験をまとめた『だから、僕は学校へ行く!』が文庫化。オトタケが小学校教員を志した理由が、ここに! 発行:講談社(2010年9月) 税込価格:500円 購入はこちらから
『だいじょうぶ3組』サイン会開催
オトタケ初の小説『だいじょうぶ3組』出版を記念して、 都内3か所でサイン会を開催することとなりました! 詳細は、下記の通り。 みなさん、ぜひオトタケに会いにきてください(^O^)/ ★9月21日(火) 19:00~21:00 @青山ブックセンター本店(表参道) 「トークショー&サイン会」 ※定員は120名様です。 ※応募方法などは、こちらをご覧ください。 ★9月23日(木・祝) 13:00~ @久美堂本店(町田) ※定員は100名様です。 ※応募方法などは、直接、店舗のほうへご確認ください。 ★9月23日(木・祝) 17:00~ @リブロ池袋本店(池袋) ※定員は100名様です。 ※応募方法などはこちらをご覧ください。 なお、いずれの会も、宛名書き&記念撮影はご遠慮いただいております。みなさまに気持ち良く楽しんでいただくため、ご理解のほどよろしくお願い申しあげます。
武田双雲×乙武洋匡『教育対談』 on Twitter②
Twitter上で行われた書道家・武田双雲さんとの教育対談。 それでは、2日目スタート~♪ 双雲:おはようございます。今日もよろしくお願いします(^O^) 早速ですが、乙武さんが感じる今の学校の問題点はどこですか? 乙武:過剰な「温室栽培」となってしまっている点ですかね。わずかな傷さえつけることを恐れて、何重にもビニルハウスで囲ってしまっている。だから、子どもたちは自分の欠点や短所に気づく機会を奪われているように思うんです。たとえば、バレンタインデー。学校に(その日だけでも)チョコを持ってきてはいけない理由を聞くと、「もらえない子が傷つくから」。でも、僕はそうした傷って必要だと思うんです。「あ、俺ってモテないんだ」と気づき、「じゃあ、モテるためには…」と自分を磨く。 双雲:なるほど。 乙武:運動会でもそうですよ。同じようなタイムの子をならべ、あまり差がつかないように配慮する。足の遅い子が傷つかないように、と。それから、教師は子どもたちに「お父さん、お母さん」ではなく、「おうちの人」と言うように指導を受ける。これは、「片親しかいない子どもが傷つかないように」という理由からです。 双雲:僕の教室でも、字がうまく書けなくて悔しくて泣く子がたまにいますが、その後、必ず飛躍します。弱さと向き合えた子は強くなっていくのを目の当たりにしてきました。弱さと強味をしっかり伝えるのも先生の醍醐味かと。 乙武:挫折から得られるものは、決して小さくないですね。まわりの大人は、その子が挫折でぽっきりと折れてしまわないようフォローしてあげること、そして、その挫折からの学びがなるべく大きなものとなるような示唆を与えてあげることが重要な役割なのかなと。 双雲:小さな挫折と小さな成功をいっぱい体験させる環境づくりも大切なことかもしれませんね。 乙武:だけど、学校は少しでも傷を与えることに憶病になっている。その結果、必要以上の温室栽培に。でも、社会に出たら、そんな「ビニルハウス」ないでしょう。他人との差をイヤというほど感じながら、ありのままの自分で勝負していくしかない。その「ありのままの自分」がどんな人間なのかを知るためにも、ある程度の傷は必要ではないかと思うんです。 双雲:僕の生徒さんのなかにも、不登校や障害を抱えた子供たちと日々向き合っている先生いますが、そういう子たちはいやがおうにも普通の子と比べられてるから、逆に傷に強い子が多いと感じているそうです。 乙武:なるほど、興味深い…。でもね、学校側の姿勢もわかるんです。いまは、わずかな傷にも過剰な反応を示す保護者がいて、学校を飛び越えて、じかに教育委員会などへクレームを入れられる。一度、そうなってしまうと、「再発防止のために」と何度も会議を重ね、レポートを書かなければならない。そうなれば、子どもと向き合う時間がさらに奪われてしまうから、結局は「クレームの対象」となりそうな要素は、できるかぎり排除しておこうとなる。学校が「無難に、無難に」と志向してしまう背景には、こうした事情があるんです。 双雲:では、極度の温室栽培から抜け出すために、今日から誰が、何をしていけばいいのでしょうか。 乙武: 「温室栽培」から脱却するため、僕はまず保護者との信頼関係を築くことに努めました。小渕元首相の「ブッチホン」ではないけれど、よく電話をかけるようにしたんです。担任からの電話は、ふつう何かトラブルが起こったときにかかってくるものだけど、僕は子どもの頑張りを伝えたくて、しょっちゅう電話をかけていました。 双雲:小学校の先生をされている僕の生徒さんが、「PTAと教育委員会への対応が大変だ」と歎いてましたが、乙武さんは、そのPTAにあえて電話を? 乙武:「○○ちゃん、今日ずっと苦手な逆上がりの練習をしていたんですよ」とか、「○○君、今日は△△委員に立候補してくれたんです」とか――結局、逆上がりができなくてもいいんです。委員がほかの子に決まってしまってもいいんです。僕は結果だけでなく、その子の頑張りや意識の変化を伝えたかった。結果だけなら、通知表で十分ですから。 双雲:乙武先生、すごい行動力!保護者の方々の反応はどうでした? 乙武:保護者のみなさんは、最初のうちはさすがに戸惑っていました。「本当はうちの子が何かしたんでしょう?」と信じてくれなかったり……(笑)。でも、僕が本当に頑張りを伝えるためだけに電話しているのだとわかると、とてもよろこんでくださるようになった。そして、僕は電話を切るとき、最後には必ずこう言うようにしていたんです。「いっぱい褒めてあげてください」って。 双雲:それはステキな言葉ですね。 乙武:こうして信頼関係を築いておくと、いざ僕が「従来の手法とは異なる指導」をしても保護者のみなさんは信じてくださるんです。「あの先生なら、きっと子どもたちのためを思っての指導なのだろう」と。信頼関係がないまま、他の先生とはちがう、“変わったこと”をすれば、やっぱり保護者だって不安に思うはず。 双雲:教育に近道はないのですね。 乙武:学校に疑心暗鬼な一部の保護者。その保護者の声に脅えて、硬直化してしまった学校。状況は、決してかんたんじゃない。そんなのわかっているけど、あきらめてタメ息ついてるより、僕は少しでも前に進みたかった。保護者への「OTOフォン」は、そんな想いから始めたことでした。 双雲:1つ1つやれることを精一杯やっていく。素晴らしいですね。ただ、多くの先生が一生懸命やっていても空回りしてしまう場合も多いと聞きます。 何かそういった先生に伝えてあげられる言葉があるとしたら何でしょう。コツというか。 乙武:たった3年しか経験していない僕が先生方にアドバイスなんておこがましいけれど、あえて言うなれば、教育界ではない人と積極的に交流を図ること、かなあ。狭い世界に閉じこもっても、何もいいことはないから。 双雲:なるほど。では、乙武さんの教育現場での失敗談を教えて下さい。ちなみに僕は失敗しまくり。 乙武:音楽の先生が出張でいないのに、それ忘れてて子どもたちを音楽室に送り出しちゃったとか、そんなレベルの話ならいくらでもありますけどね(笑)。でも、双雲さんのご質問の意図はそういうことじゃなく、もっと本質的なことですよね…。 双雲:フォロワーのみなさんから、綺麗事とか薄っぺらいと言われないような展開にしましょう(笑) 乙武:僕のクラスに、何度注意しても同じ失敗を繰り返す子がいて、そのたびにきつく叱っていたんです。でも、あとになってわかったことだけど、その子は認知の仕方が特徴的で、他の子と同じように伝えても、理解がむずかしかった。それを知ったときは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました……。 双雲:乙武さんは、そういうお子さんにどう対応されたのですか? 乙武:経験豊富な養護教諭(保健の先生)のアドバイスに基づき、「聞いたらすぐメモに取る」など、いままでとは異なるいくつか方法をその子に提案しました。数ヵ月後、その子は劇的に伸びていきました。 双雲:それはすごい!あ、そろそろ夜も更けてきましたね。ここで一旦、対談を終了しましょうか。 乙武:そうですね。今日も双雲さん、みなさんと有意義な議論ができたことに深く感謝しています。僕は担任として、23通りの個性、23通りの家庭環境しか知ることができなかったけれど、みなさんが「うちは~です」とお話しくださり、たいへん勉強になりました。 双雲:本当にその通りですね。忌憚ないご意見をくださったみなさんに深く感謝致します。 乙武:また、僕や双雲さんのツイートに対して反論くださったり、「わかってない」などとご意見くださった方も多数いらっしゃいましたが、それも当然のこと。とくに「正解」がない教育問題では、多くの人が意見をぶつけ合い、建設的に解決への道を探っていくのが大事なことと思っています。だからこそ、異論・反論のツイートにも深謝。 双雲:そう、僕らはまだまだ固い。もっと柔らかくなるよう成長していかなければ。 乙武:その意味でも、こうしてみなさんと議論するきっかけを与えてくださった双雲さんには深く感謝しています。僕らの対談が、みなさんの教育についての関心を深めるきっかけとなったら、これ以上なくうれしく思います。本当にありがとうございました! 双雲:貴重な体験を熱く語ってくれた乙武さん、ありがとうございました。いつかまた!
だいじょうぶ3組
3年間にわたる小学校教員としての経験をまとめた、オトタケ初の小説! 車いすに乗った新任教師・赤尾慎之介が体当たりで子どもたちにぶつかっていく日々から見えてきたものとは――。 発行:講談社(2010年9月) 税込価格:1470円 購入はこちらから
『だいじょうぶ3組』予約開始!
9月3日(金)発売となる新刊『だいじょうぶ3組』(講談社)が、 Amazonで予約受付を開始しました。 3年間、小学校教員として子どもたちと向き合った日々。 そこで感じたオトタケの想いがたっぷり詰まった力作です。 どうぞ、ご一読ください!
武田双雲×乙武洋匡『教育対談』 on Twitter①
先日、書道家・武田双雲氏の呼びかけにより、 Twitter上で『教育』をテーマとした対談を行わせていただきました。 「えっ、興味があるのに見逃してしまった!」という方のために、 この「OTO-ZONE」でも対談をリライトした上で再掲載! 双雲さん、あらためてありがとうございました(^O^)/ では、ふたりの熱~い議論をたっぷりお楽しみください♪ 双雲:乙武さーん、すみません、思いつきですが、ツイッター上で、 「教育」について対談してみませんか。 乙武:双雲さん、ぜひやりましょう! 双雲:わお。ツイッターならではのスピード。ありがとうございます! こ、こほん。では乙武さんのお言葉に甘えて、突如、乙武 洋匡×武田双雲のツイッター教育対談を行ないます。僕から勝手に質問を投げさせてから、のんびりやりとりを。空き時間に気まぐれな感じで。140字と限られているので失礼にとれる文章もあるかと思いますがご容赦下さい。 乙武:了解!のんびり、ゆっくり語り合いましょう(^O^)/ 双雲:では、早速。乙武さんはどんな子どもでしたか? 乙武:とにかく、負けず嫌い。やっぱり、他の子と比べてできないことが多い。でも、「何くそ!」という生来の負けん気が僕を後押しし、みんなと同じように、もしくはそれ以上にやってやろうと、いろいろなことにチャレンジしていました。 双雲:なるほど。僕は長男でぬぼーって感じで、ナニクソパワーで動いたことはないタイプですが、ほんとは負けず嫌いが奥底にあるのだと思います。大人に「歯をくいしばって、悔しさをバネにがんばれ」と言われたのが嫌ということもあり。 乙武:誰しも、自分のキャラではない頑張り方を強要されるのはしんどいですよね。「○○君のように頑張れ」は、その子を応援しているようで、じつは追い詰めていることもあると思うんです。「○○君のように~」は、とくに兄弟間で比較して、親がどちらか一方に言ってしまう言葉のように思います。その点、僕は一人っ子だったから救われた部分もあるのかも。ふたりの息子を持つ父としては、そのあたり気をつけないと。 双雲:同感です。ただ、僕の子供は上が男で下が女だから、そこらへんの差別感はあまりないかも。でも、「つい男なんだから」とか言ってしまってよくないなぁと反省してます 。ちなみに、僕は男三兄弟の長男。弟は学校でも僕と比較されて辛い思いをしたと思います。乙武さんは一人っ子で辛いと思ったことはありますか? 乙武:うちは両親が非常に仲良く、ラブラブ(!)だったので、家族旅行のときなどはちょっとした淋しさを感じていました。でも、それが「自分も早く結婚して、家庭を持ちたい」という思いにつながったのかも。 双雲:なるほど。では、乙武さんは親にどんな言葉をかけられましたか?また、それをどう思っていました? 乙武:とにかく褒められて育ちました。生まれた時点で、「この子は一生寝たきり」というあきらめが親にあったから、寝返りをうっても、起き上がっても、それだけで「すごい!」となったそうです。 ほとんどの親は「健康に生まれてきてくれたら、それで十分」と願っていたはずなのに、いざ育ってみると、「あれがダメ」「これも不十分」と、あれこれ欲が出てくるのでしょうね。 双雲:なるほど!僕もなぜか両親に褒められて育ちました。会社辞める相談を父にした時に「どっちにしろお前の決断を全面的に応援する」と言ってくれました(T_T) 乙武:ステキなお父様ですね! 双雲:では、叱り方についてはどうでしょう?僕の母は叱り方が上手いほうだったと思います。人に迷惑をかける行為に関してだけ短く勢いよく、行為だけを叱る。さっぱりと明るく。乙武さんは叱り方についてどういうスタイルですか? 乙武:叱り方か……うーん、難しいですね。小学校で担任していて感じたのは、叱り方に「正解はない」ということ。子どもによって、いやもっと言えば、同じ子どもでもタイミングによって、その効果が違ってくるなあと。だから、教員としてはなるべく叱り方の引き出しを増やし、個々時々に適した叱り方を選択することが大事かなと。 双雲:同感。書道教室で10年間子供たちと本気で触れてきて、机上セオリーは全く通じないことを知りました。 乙武:「~すべき」で通用するなら、指導もずいぶんラクですよね。わかっていても、やらかしてしまう子、繰り返してしまう子に、どう伝えていくか。やはり、そこに“正解”はないように思います。落語家・柳家花緑師匠が、こんなことをおっしゃっていました。「弟子が師匠」と。物覚えも悪く、頑固で素直に言うことを聞かない弟子に教えるときほど、自分自身がよく考えるようになるし、結果として本質に近づくことがある、と。 双雲:なるほど。では、ご自分のお子さんに対しては? 乙武:うーん、わが子だとどうなんだろう。いまのところ、息子が好ましくない行動を取ったときは、とても悲しそうな顔をしてみせています。 双雲:では、次の質問。人と本気で触れ合うほど、心の柔らかさが必要だと感じますが、乙武さんは教育現場に入る前と入った後で、一番価値観が変わったことは何ですか? 乙武:家庭の大切さ、ですかね。家庭が安定せず、子どもが落ち着いて学習できる環境が整えられていないと、学校でいくら素晴らしいカリキュラムを組み、いい授業をしたところで、あまり意味がないと思うんです。実際、「友達を叩く」「忘れ物が増える」などの問題行動が急激に顕著になった子どもの原因を探っていくと、「家族の入院などの事情から、急に家族が留守がちになった」「両親の仲が悪くなり、毎晩のようにその子の前で夫婦ゲンカが繰り広げられるようになった」など、家庭環境の変化による場合がほとんどなんです。 双雲:興味深いですね。 乙武:だから、「うちの子は勉強しない」と嘆く保護者の方々には、まずご家庭がその子にとって自分らしくいられる、心安らぐ場所となっているかどうかを再確認していただきたいなあと切に思うのです。 双雲:なるほど。家庭に心安らぐ場所があれば、ということですね。 乙武:僕は「怠けられる場所」の確保って必要だと思うんです。じゃないと、子どもはパンクしちゃう。 双雲:同感。僕の教室は、不登校の子でも休まず怠けにきます(笑)。「怠ける」って「がんばる」と同じくらい大事だと思います。 乙武:きっと、双雲先生のお教室は、子どもたちが自分らしくいられる、居心地のいい場所なんだろうなあ。ぜひ一度、おうかがいしてみたい。 双雲:ぜひ怠けにいらして下さい(笑)。さすがに電子ゲームは禁止にしましたけどf^_^; 乙武:それまではOKだったんだw(°O°)w 双雲:先ほど、「家庭を心安らぐ場所に」というお話がありましたけど、そのためには親自身がゆとりをもたないとですね。 乙武:たしかに、その通りですね。でも、経済的、その他の理由で、なかなか大人にもゆとりがない。そう子どものそばにばかり寄り添っていられない事情もあると思うんです。そのときは、意識的に示してあげてほしいんです。「愛してる」と。言葉で、態度で。不安に思っている子どもに、ぜひ自己肯定感を与えてほしい。 双雲:僕の生徒さんのなかには、子供が愛せなくて苦しんでいる方もいます。たとえそうでも、せめて抱きしめてほしい。 乙武:そう。抱きしめることでも、十分に伝わると思います。もちろん、家族からの愛を受けられるのがベストですけれど、現実は悲しいことに、そうした幸せに恵まれる子ばかりではない。なかには、「親に褒められなかった」「愛されなかった」と感じて育った方もいる。 双雲:そうした深い闇を見てきた方々には、僕らがどんな言葉を並べても薄っぺらく感じるかもしれません。それでも、自己肯定感は自分自身の習慣を変えることで成長すると信じていますし、僕はそうやって自分を変えてきました。少しずつ 。そして、僕らだからこそ開ける何かがあると信じて発信し続けたい。 乙武:僕は、そのために教師になったと言っても過言ではないんです。親の次に子どもたちの近くにいる教師という立場で、愛を伝えていこうと思った。親の代わりにはなれないけれど、「君のことが大切だ」と伝えていこうと。 双雲:幸せな生徒さん達ですね! 乙武:ただ、幸いなことに、 僕のクラスの子どもたちは、みんな親に愛されていた。でも、その愛がうまく伝わっていないケースもあった。それは「照れ」だったり、「言わなくてもわかるでしょ」という思い込みだったり。だから、僕は親から子へ手紙を書いてもらったんです。その手紙を読んだ子どもたちは、みんな大号泣。「こんなに大切にされてたんだ…」って。 双雲:それは、すごい! 乙武:僕より勉強を教えるのがうまい先生はいくらでもいたし、僕より子どもを楽しませることが上手な先生もたくさんいました。でも、僕は子どもたち一人ひとりがかけがえのない存在であることを伝え、自分を大切に思う気持ち=自己肯定感を育むことを、教師として、何より大切にしていたんです。そして、そんな授業も何度もしてきた。 双雲:いったい、どんな実践を? 乙武:その記録が新刊『だいじょうぶ3組』に詰まっています。小説の形式ではありますが、そのほとんどが生のエピソード。僕の教育実践なんです。「みんなちがって、みんないい」。そのメッセージを伝えるのに、僕の体は何より便利にできていたし、自分の存在に不安を抱いている子がいれば、僕は必ずこう声をかけました。「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」――だから、新刊のタイトルは『だいじょうぶ3組』としたんです。 双雲:なるほど。乙武さん、今日は本当にありがとうございました。もしよかったら、明日ものんびりおつきあい下さいませ。 乙武:知らず知らずのうちに、自分でも熱くなっていました。こうして教育について語るきっかけを与えてくださった双雲さんに、深く感謝いたします。また、明日も語り合いましょう! 双雲:僕も熱くなってしまいました。乙武さんの言葉に、僕の身近な人たちも心射たれています。乙武さんにも、みんなにも感謝の気持ちでいっぱいです。それでは、おやすみなさい。 【②へ続く】
『教師を信じろ!』
『教師を信じろ!』 前杉並区立和田中学校長・藤原和博さん編著 (ぎょうせい刊) 第一章にて、藤原先生と教育現場での経験をもとに 対談させていただいています。 教育現場でのエピソードが盛りだくさん。 ぜひ、ご一読ください!