OTO ZONE

夜鳥の界

2010年11月19日

東京新聞『わが街わが友』全12回の連載をお届けするシリーズ。
今日は、歌舞伎町で活躍する親友との出会いについてつづった
第8回「夜鳥の界」をお送りします!

 

第8回『夜鳥の界』
日本一とも言われる新宿・歌舞伎町。ネオンがきらびやかに輝く、眠らない街。多くの飲食店や風俗店とともに、この街のあちこちに看板を出しているのがホストクラブだ。じつは数年前から、僕はこっそりホストクラブ通いをしている。というのも、僕の親友が歌舞伎町でホストクラブのオーナーを務めているのだ。

手塚真輝と出会ったのは、いまから6年近く前のこと。自身もテレビ出演するほどに人気のあるカリスマホストだった手塚だが、25歳のときに独立し、ホストクラブ『スマッパ!』を開店。みずから従業員を抱える身となった。以来、ホストクラブ3軒、バー5軒を新規開店。経営者としての手腕もなかなかのものだが、彼の本当の魅力は、そのユニークな社会的活動にある。

2004年に起こった新潟県中越地震。手塚はタクシーを飛ばして新潟県庁まで駆けつけると、ぽんと百万円を寄付した。「目立ってやろう」との思いからだったが、その後訪れた被災者が集まる体育館で、「本当にありがとね」と涙ながらに手を握られ、目が覚めた。

「いままでホストなんて何をやっても認められるはずないと思っていたけど、ホストという職業をいちばん色眼鏡で見ていたのは僕自身だったのかもしれない」

東京に戻ると、手塚はボランティア団体を立ち上げた。『夜鳥の界』――月一回、スーツ姿でキメたホストたちが深夜の歌舞伎町を清掃する活動は、すぐに話題となった。
「おまえたちがこの街のゴミだ、なんて言葉を聞かされたこともある。それでも、僕にはこの街に育ててもらったという感謝の思いがあるから」

そんな思いを熱く語ってくれた手塚とは、年も一つしか離れていないこともあり、すぐに意気投合。毎週のように酒を飲む間柄となった。 C1f4dd13171a29fac6885bc0d84e1610


早稲田での原点 歌舞伎町の教育者
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