『流星ワゴン』
演劇集団キャラメルボックス公演『流星ワゴン』@池袋サンシャイン劇場を観劇してきた。これは、重松清さんの小説『流星ワゴン』の舞台化。重松さんの世界観をどんなふうに体現するのか、行く前からとても楽しみにしていた。
「死んじゃってもいいかなあ」とまで思うほど、人生に失望した主人公。突然現れたワゴンに乗って次々と現実の裏側にあるものを見せられ、さらに打ちのめされていく。だが、同時に、自分のなかで何かが、確実に変わっていく。
2011年は未曾有の大震災に襲われ、この国全体が暗く沈んだ。被災地であれ、非被災地であれ、つらい経験を味わい、悲しみに暮れた。だが、だからといって、そこで僕らの人生が終わるわけではない。それでも僕らの人生は続いていく。僕らは、生きていく。だとしたら、どう生きていけばいいのか。
あきらめて、投げ出してしまうのか。厳しい現実に四方を取り囲まれても、もがき、あがいていくのか。主人公も、そこに苦悩し、葛藤を抱く。そして、最後には――。今年、苦しい現実を突きつけられた僕らが、一年の終わりに観るにふさわしい作品だと思った。
また、この作品を貫いているのは親子愛。劇中、ふたりの息子のことを思い浮かべつつ、十年前に亡くなった父の姿も脳裏に浮かんだ。もし、父が生きていて、酒でも酌み交わせたらなあ。まあ、いくら考えても叶わない夢だから、もし実現したらどんな会話をするのかを想像しながら、今夜はゆっくり湯船にでも浸かろう。
キャラメルボックスのクリスマス公演といえばファンタジー作品が定番だが、今回はまたちょっと毛色が違う。でも、それが良かったようにも思う。こうした年だからこそ、この『流星ワゴン』という作品で良かったのだと、心から思う。本公演は、25日(日)まで。良席で観るなら平日がオススメ。女性は、メイクが崩れるのでご注意あれ。
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