サイズの確認
ひさしぶりに会った友人と、某ファーストフード店でお茶していた。
友人のとなりには、今年5歳になる息子さん。
「お父さん、のどかわいた!」
友人は、「よし」とつぶやくと財布から千円札を出して、彼に手渡した。
「これ持って、お店の人に『コーラください』って言うんだぞ」
渡された千円札を大事そうに握りしめてレジへ向かう彼を見送りながら、
友人は僕に向かって、こんなことを言った。
「はじめてのおつかい、なんです」
ええーーっ!!
さらっと、そんな場面に遭遇だなんて!!
僕は、急に不安な気持ちになって、あわてて視線で彼を追いかけた。
レジにならぶ息子君。いよいよ、彼の順番だ。
担当は、やさしそうなお姉さん。何だか、僕がホッとする。
「コーラください!」
数メートル後ろにいた僕らにまではっきり聞こえるほどの声で、
きちんと注文することができた。完璧だ。
ところが。
つぎに店員さんの口から出た言葉に、僕は友人と顔を見合わせた。
「Sになさいますか? Mになさいますか?」
あっ、そこまで教えてなかった…。
困った表情で、小首をかしげる5歳の男の子。
だが、向かいあう若い女性店員もまた、困った表情を浮かべている。
「えーと…Sでよろしいですか?」
チビッコが何のことだかわからないまま首をタテに振ると、
やがて小さなカップに入ったコーラが手渡された。
それでも息子君はうれしそうな顔で戻ってきたけれど、
僕は「もったいなかったなあ」と思った。
もし、あのとき彼女が機転を利かせて、
「Sになさいますか? Mになさいますか?」という決まり文句ではなく、
「小さいのがいい? それとも、もう少し大きいの?」
と言葉を替えていてくれたなら――。
彼は、きっと、もっと晴れやかな笑顔で「はじめてのおつかい」から
帰ってくることができたんじゃないかと思う。
誤解してほしくないのは、べつに彼女を責めているわけじゃないということ。
ただ、こんなとき、「小さいの? それとも――」と気のきいた言葉が
出てくるようにするためには、いったいどんな教育をしたらいいのかな、と。
そんなことを考えさせられた一場面。
忘れないように、書き残しておこう。
次男誕生 | 『教師を信じろ!』 |
次男誕生 | |
『教師を信じろ!』 |