『1/6900000000』ができるまで②
昨日のブログの続き。
「メッセージを伝える曲を一緒につくりたいんです」
電話口の向こうでそう言ってくれたFUNKIST・染谷西郷の言葉に、
僕は何の迷いもなくうなずいていた。
その2日後、銀座の喫茶店で待ち合わせた僕らは、
すぐに具体的な曲づくりの話に移った。
西郷「僕が先に曲をつくって、そこに乙武さんが歌詞を書くのと、
乙武さんが先に歌詞を書いて、そこから僕が曲をつくるのと、
どっちのほうがやりやすいですか?」
乙武「じゃあ、西郷がやりにくくなければ、先に曲をつくってよ。
その曲を聴いて、そのあとで俺が詩を考えるから。
ちなみに、どんな感じの曲にする? テーマというか……」
西郷「とくに決めてるものはないんです。ただ、これまでFUNKISTが
伝えてきたことと、乙武さんが伝えてきたことが重なっている部分、
それをひとつの曲に込められたら、十分にメッセージ性のある、
みんなに伝わる曲になるのかなって」
その言葉に、僕はとても安心したのを覚えている。
それまで6年近くともに歩んできて、「僕とFUNKISTの重なる部分」は
心の底で十分に感じていたから。
その日から、僕はずっと曲づくりのことばかり考えていた。
そのとき、ちょうどあのニュースが飛び込んできた。
群馬県桐生市で、小学6年生の女児が首をつって自殺したという。
その原因は、間違いなく学校で受けていた「いじめ」にあった。
「学校はいじめに気づかなかったのか」「親は何をしてたんだ」――。
自分には何の責任もないと信じ込む人々の非難する声に、
「いじめはなかった」と心ない言葉を平気で口にする校長に、
何も力になってあげられなかった自分の無力さに、ただ腹が立った。
情けなくて、申し訳なくて、「ごめんね、ごめんね」と何度も思った。
僕は、このときの心境をつづったブログのなかで、最後にこう書いた。
「君のような苦しい思いで、この世を去っていく子どもが、
一人でもいなくなるように――。
僕にできる精いっぱいのこと、力を尽くしていくからね」
それが、この曲なんじゃないか。強く、そう思った。
「誰もひとりじゃないぞ!」
西郷が、ステージ上からそう叫ぶシーンを何度も観てきた。
そう、僕らはひとりなんかじゃない。
いまは孤独で、さみしくて、誰にも理解されていない――
そう思っている人もいるかもしれない。
だけど、どこかに必ず、君のことを受け止め、理解し、
ありのままの君でいることを認めてくれる人がいる。
きっと、いるはずだから――。
そんなメッセージを社会全体で発信していくことができたら、
いま孤独感にさいなまれている若い世代を、
みずから命を奪ってしまうような子どもたちを、
救ってあげられるんじゃないだろうか。
西郷の言葉が、耳の奥によみがえった。
「音楽で世界を変えよう」
僕は、猛烈な勢いでパソコンのキーボードを叩きはじめた。
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