OTO ZONE

Monthly Archives: 6月 2011

命のアルバム

まだ6月だというのに、連日、30℃を超える暑さ。 みなさん、バテたりしてませんか? 先日、Twitterで日本酒を飲んでいることを書きこんだら、 実家が宮城県で酒蔵を営んでいるというフォロワーの方が、 「ぜひ、私の実家で製造している日本酒を飲んでください!」と、 わざわざ日本酒を送ってくださいました。 今回送っていただいた「黄金澤 大吟醸」は、全国新酒鑑評会で なんと12回も金賞を受賞したことがあるという逸品です。 今回の震災で、工場も大きなダメージを受けたとのことですが、 それでも前を向いて頑張っておられるようです。 さて、今回はその方から送っていただいたお手紙のなかにあった エピソードがあまりにステキだったので、ご本人の許可を得て、 ここに紹介させていただきたいと思います。 以下、仙台で就職活動中という学生さん(送り主さん)からの 手紙の引用です。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・ 今回の震災で、私自身も、10年来の大切な友人を亡くしました。 訃報を受けてからしばらくは現実を受け入れられず、気持ちの整理が つかない日々を送っていました。 そんななか、乙武さんのツイートが目に留まりました。 「人と人とが関わりあって生きていくうえで、相手の気持ちには、 もちろんなれない。けれども、相手の気持ちを想像し、 心を寄り添わせようとすることはできる」 このツイートを読み、「何かしなくちゃ!」と考えました。 友人の家族は、友人のほかに、お父様、弟さんの3人が亡くなり、 お母様だけが生き残りました。一番つらい思いをされているだろう お母様に、私たちができることは何か、必死に考えました。 ご自宅も津波に流され、家族の思い出のものがほとんど 残っていないとのことで、同じ学年の仲間同士で呼びかけ、 彼女が写っている写真、彼女が書き残したもの、 仲間から彼女に宛てた手紙をまとめてアルバムを作り、 お母様にお渡しすることにしました。 たくさんの仲間や母校の先生たちが力を貸してくれたおかげで、 数百枚の写真、百通近い手紙からなるアルバムをお渡しする ことができました。 お母様は、「写真なんて、もうあきらめてたの。短かったけど、 あの子は生きていたんだね。こんな宝物、どうもありがとう」と、 涙を流して喜んでくださいました。 大切な友人を生んでくれたお母様に喜んでいただけたのも、 乙武さんのツイートに勇気をいただいたおかげです。 本当に、どうもありがとうございました!! ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・ 友人と、残されたご家族への想い。 そして、その行動に、思わず目頭が熱くなりました。 本当に、本当に、ステキなお手紙をありがとうございました。 来月、また僕も被災地へ行こうと思っています。


『ブラック・スワン』

昨日、映画『ブラック・スワン』を観てきました。 みなさんから、「ぜひ感想を」とのリプライを多数いただいたので、 ネタバレしない程度に、僕なりの感想を書いてみたいと思います。 まず、この映画はバレエを描いてはいるけれど、 決して「バレエ映画」ではない。人間の心理を描いた物語。 バレエを知らない僕でも、十分に楽しめました。 前評判の高かったナタリー・ポートマンの演技も圧巻。 美しさ、儚さ、気高さ、という異なる要素を巧みに操りながら、 見事に主人公のなかに眠る様々な感情を演じ分けていた。 終盤の重要なシーンでのダンスと表情は、まさに鳥肌モノ。 映画『レオン』の少女役のときも、いい表情してたもんなあ。 さて、本題。 僕も表現者のひとりとして、いろいろ考えさせられる映画でした。 「白」という色しか知らない人が表現する「白」と、 対極に位置する「黒」という色まで表現する力を持った人が伝える 「白」は、同じ色のはずなのに、深みが違ってくる。 観客(読者)のなかでの響き方が違ってくる。 僕が発信しているメッセージは、たぶん「白」。 でも、僕が本当に「白」しか持ち合わせていなかったら、 これだけ多くの人々に僕の思いは伝えられていない気がする。 僕にも、いつからか黒がある。 いや、「乙武さん、よくブラックジョーク言いますもんね」という その黒じゃなく、本当の黒。心の、黒。 昔は自分のなかに「黒」があることなんて認めたくなかったし、 それが怖くて仕方なかった。でも、いつからだろう。いまの僕は、 自分のなかにある「黒」をじっくり見つめたり、いろいろな角度から ながめている時間が、決して嫌いじゃない。 なんなら酒でも汲み交わしながら、ゆっくりと己のなかの「黒」と 語り合いたい。 自分のなかの「黒」とじっくり向き合えるようになってから、 僕はバランスが取れてきた気がする。 昔は、何かあればポキリと折れてしまいそうな脆さがあったけれど、 いまはそう簡単に折れやしない。 まあ、折れたら折れたで、また叩いて、延ばして、好きな形に 作り変えたらいいや、という開き直りにも近い思いがある。 僕がFUNKISTを愛してやまないのも、 彼らのメッセージが決してきれいごとの「白」なんかじゃなく、 社会の「黒」、人間の「黒」とさんざん向き合って、語り合ってきた 過去から生みだされる「白」だからなんだと思う。 そうした人間にしか生みだせない、叫び。思い。色――。 だから、僕の心に響く。 だから、太宰治が好き。 己のなかの「黒」に苦しめられ、翻弄されつづけたにもかかわらず、 その「黒」と誠実に向き合い、その「黒」を抱きしめつづけた太宰。 彼は、弱かったんじゃなく、マジメだったのだと思う。 そんな迷いや葛藤が、素直に垂れ流される彼の作品が、 たまらなく愛おしい。 映画『ブラック・スワン』、僕は表現者としての「白」と「黒」について じっくり考えさせられた作品でした。 そして、主演のナタリー・ポートマンは、その「白」も「黒」も、 どちらの色も最高の形で表現してみせてくれました。 本当にすばらしい女優さんだと思います。 あくまでも、僕の所感です。 みなさんの感想も、ぜひ聞かせてくださいね。


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