OTO ZONE

Monthly Archives: 7月 2011

また、会いましょう

東日本大震災から、4ヶ月半が経ちました。震災直後、僕は被災地に 駆けつけ、炊き出しや瓦礫撤去といったボランティアができないことに もどかしさを感じていました。こんな僕が行っても、むしろ迷惑をかける だけだろう、と。 けれど、震災から一ヶ月ほどが経ち、食糧や生活に必要最低限の 物資が届きはじめたという報道を見て、僕のなかで少しずつ心境に 変化が起こりはじめました。 次に重要なのは、被災地の方々が、「もう一度、希望を捨てずに 生きていこう」と前向きな気持ちを取り戻していくことではないか。 そして、そのためのお手伝いなら、僕にも何かお役に立てることが あるのではないだろうか、と。 そんな気持ちから、五月上旬、僕は被災地へと向かいました。 破壊された街並み。大切な人を失った悲しみ。訪れた地では、 想像以上に胸を締めつけられる場面が多くありました。 でも、それと同時に、希望を失うことなく、前を向いて歩み出した 勇敢な人々と出会うこともできました。彼らは、本当に輝いていた。 だから、僕は新刊のタイトルを『希望 僕が被災地で考えたこと』と しました。 そして、僕がいちばん頭を悩ませたのは、そうした被災地の人々と 別れるとき、どんな言葉をかけたらよいのだろうか、ということでした。 難しいことだとわかっていながらも、相手の立場を慮ってみる。 それでも、なかなか答えの出るものではありません。 「頑張ってください」「頑張りましょう」「元気を出してください」―― どれも、僕のなかでは、しっくり来るものではりませんでした。 結局、僕が選んだのは、「また、会いましょう」という言葉でした。 苦しい状況のなか、少しでも未来を感じられる言葉にしたかったから。 未来に光を感じてほしかったから。「また、会いましょう」と。 東京に戻ってきた僕は、「あの言葉を口約束にだけはしたくない」と、 ずっと思っていました。そして、その約束を果たす日がやってきました。 今日から、また被災地へ行ってきます。 今回は3日間しか確保できなかったので、訪れる場所も限られて しまうと思うけど、僕なりの、僕だからこそできることを意識しながら、 3日間を過ごしてきたいと思います。 また、ご報告させてください。僕が感じたことを。 ※前回訪問時の活動詳細については、楽天イーグルスでの始球式や 石巻での特別授業の様子も含め、『希望 僕が被災地で考えたこと』に 詳しくあります。ぜひ、そちらをお読みいただければと思います。


なでしこJAPAN・澤穂希選手

なでしこJAPAN・澤穂希選手と、神戸にて。


なでしこ優勝に思うこと

サッカー女子日本代表・なでしこJAPANが、W杯で優勝。 朝から、胸が熱くなった。おめでとう。本当に、おめでとう!! 今大会、キャプテンとしてチームをけん引した澤穂希選手とは、 取材でお世話になってから、もう十年来のお付き合い。 怪我で苦しんでいた時期も、渡米先で悩んでいた時期も、 ずっと前を向いて頑張ってきた彼女の姿をそばで見てきたからこそ、 この試合に臨む彼女の表情を見るだけで、ぐっと来た。 いや、そんな背景を知らなくたって、今日の勝利は僕らに力をくれた。 それだけ、彼女たちは素晴らしいスピリットを見せてくれた。 だが、“世界一”という偉業を達成した彼女たちも、日頃は驚くほど 過酷な生活を送っている。海外組や一部のプロ契約選手以外、 ほとんどの女子サッカー選手は、サッカーを職業としていない。 つまり、サッカーでは「メシが食えていない」のだ。 昼間は会社勤めをしている。もしくは、バイトをしている。 そして、夜になって、所属チームの練習に参加する。 きっと、疲れているだろうに。サボりたい日もあるだろうに。 同僚のOLたちが、気晴らしに飲みに行ったりしている間、 彼女たちはグラウンドでサッカーボールを追っている。 もちろん、「好きだからやっているんでしょ」の声はある。 だけど、恋人や友人と過ごす時間も削り、すべての空き時間を サッカーに費やす日々には、「好きだから云々」のひとことでは とても片づけることのできないストイックさがある。 忘れてはならないと思う。今日、僕らが得た感動は、彼女たちが 犠牲にしてきた多くのものに支えられているのだということを。 僕らはそんな事実を忘れ、しばらくすると、また次の感動に飛びつく。 そんな「感動のいいとこどり」を繰り返してきた。 感動の準備段階では、「好きでやっているんでしょ」。 でも、いざ感動の場面になると、「感動をありがとう」。 僕らはたいした対価を払うことなく、ただ感動だけを享受してきた。 あえて強い言葉を使うならば、競技者から感動を“搾取”してきた。 いつも日本中を駆け巡る「感動をありがとう」の言葉は、 選手たちの心の支えになっても、生活の支えにはならないのだ。 たとえば、かなりの可能性を秘めた選手がいたとしても、 「家族や友人と過ごす時間とお金、そのすべてを犠牲にできるか」 という問題に直面したとき、その競技を断念することだってあるだろう。 しかし、僕らが、社会が、その下支えとなり、競技に専念できる環境を 整えることができれば、そうした選手だって競技を続けることができる。 これは、スポーツに限った話ではない。 音楽にも、芸術にも、伝統文化にも、ほぼ同じことが言える。 いまは、競技や文化が到達した“結果”にしか目が向けられていない。 だが、それらがある地点まで到達しようとする“過程”にまで 目が向けられるようになれば、そこにはきっとお金も生まれる。 文化が成熟するって、たぶん、そういうことなんじゃないだろうか。 ただ、国民に「これだけ感動したんだから対価を払え」と言っても、 そうした文化が定着していない日本では、なかなかその考えを 受け入れてもらえないないように思う。だから、言い方を変えよう。 「感動の準備段階にもっとお金を使えば、いままでより多くの感動を 得られるかもしれませんよ」と。あくまでも、ポジティブにね。 スポーツを含めた文化全般を支えていく仕組みを、いま一度、 みんなで知恵を出し合って考えていきたい。 あらためて、そんなことを思わせてくれた、歓喜の朝。 なでしこJAPAN、本当におめでとう!! ※本文は、このテーマについて陸上・為末大選手とTwitter上で 交わした会話をもとにして、大幅にリライトしたものです。 詳しくは、Togetter「なでしこ優勝の裏側で…」にありますので、 ご興味のある方は、そちらをご覧ください。


オトタケ先生と3つの授業

乙武が小学校教員として実際に行った授業が、かわいいイラスト入りで、読み物として生まれ変わりました。 収録した3篇の授業すべてが、クラスの子どもたちのために考えたオリジナル授業。言わば、「世界にひとつだけの授業」です。 発行:講談社(2011年7月) 税込価格:1,365円 購入はこちらから


希望 僕が被災地で考えたこと

3月11日、東日本大震災が起こり、乙武はあらためて障害者としての自身の無力さに打ちのめされました。 そこから、「自分にも力になれることがあるのではないか」と考え直し、被災地に向かい、現地で出会った人々との交流をつづった一冊。 発行:講談社(2011年7月) 税込価格:1,365円 購入はこちらから


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