OTO ZONE

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MONGOL800

モンパチの3人と!『800だョ♪全員集合』@宜野湾海浜公園。


短かった僕の“絶頂期”

先月、小説『だいじょうぶ3組』が出版されたことは重ねてお伝えして いますが、じつはもう一冊、僕にとって大切な本が出版されています。 『だから、僕は学校へ行く!』(文庫版) じつは、この本のPRのため、講談社が発行する月刊文庫情報誌 『IN☆POCKET』にエッセイを寄稿させていただきました! 編集部のご好意で、当サイトにも転載できることとなりましたので、 ぜひご一読いただければ幸いです(^O^)/ ****************************************************** 『だから、僕は学校へ行く!』――ちょっぴり、風変わりなタイトルなのかもしれません。大学卒業後、スポーツライターとして活動していた僕が、突然、大学に入りなおして教員免許を取得し、小学校の先生へ。そこに至るまでの心の動きを伝えたかったからこそ、こんなタイトルをつけてみました。 本書では、新宿区教育委員会の非常勤職員「子どもの生き方パートナー」として小・中・養護学校を回らせていただいた経験、さらには日本テレビ系「世界で一番楽しい学校」の取材で世界五ヶ国の学校を取材させていただいた経験をもとに、「自分はどんな教師になりたいのか」「教育現場はどんな問題を抱えているのか」について、僕自身が考えを深めていく過程が描かれています。 子どもたちへの体罰・セクハラの線引き。本当に身につけてほしい学力とは。教室内の多国籍化。障害のある子とない子がともに学ぶ環境づくり。個性の尊重とクラスの秩序というバランス。不登校という選択。近所のオジサン、オバサンも教育に参加する重要性――現場では、本当にさまざまなことを見聞きし、考えさせられました。 本書では、そのひとつひとつを章ごとに取り上げ、僕なりに感じたことを交えながら、それぞれの事例を紹介してあります。「ふむふむ、そうなのか」と、いまの教育現場についての新たな発見を感じながら、興味深くお読みいただければ幸いです。 じつは、この単行本の表紙を撮影した当時、僕は絶頂期でした。何が絶頂期だったかというと……体重です(笑)。人生初となる四十キロ台がもうすぐそこ!という、かなりふくよかな状態だったのですが、本書が刊行されてすぐ、杉並区立杉並第四小学校教諭――つまり、小学校の先生として働きはじめると、体重はぐんぐんと減っていき、あっという間に三キロの減量に成功しました(ん、減らそうと思っていたわけではない場合、「減量」とは言わないのかな)。いかに小学校教師がしんどい仕事なのか、その目方の変化がじつによく伝えてくれているように思います。 なんと、今回刊行される文庫版の表紙にも、三年前に撮影した“ふくよかな”頃の写真が使用されるとのこと。九月三日に発売になったばかりの初の小説『だいじょうぶ3組』(講談社)の著者近影ページと見比べて、その体重の変化をお楽しみください!? (『IN☆POCKET』9月号より)


「障害」=「個性」?

今日は、『誰だって波瀾爆笑』という番組に出演させていただきました。 とても反響が大きく、あらためてテレビというメディアのもつ影響力の 大きさに驚かされているところです。 以前は、テレビや新聞など「マス」メディアが発信することがすべて。 でも、ブログやツイッターといった「個人」メディアの登場によって、 そんな状況にも少しずつ変化が見られてきたように思います。 僕は、両者をこんなふうに使い分けています。 「広く」伝えたいときには、テレビや新聞などのマスメディア。 「正確に」伝えたいときには、ブログやツイッターといった個人メディア。 もちろん、マスメディアが不正確だと言うつもりはありません。 ただ、細かい言葉のニュアンス、言い回しなどにこだわる僕には、 どうしても第三者に言葉を委ねることになるマスメディアよりも、 一字一句を自分の言葉で伝えることができる個人メディアのほうが、 より安心感をもって、正確に伝えられる気がするのです。 メディアに言葉を託したことによって、誤解が生まれ、 その言葉だけが独り歩きしてしまった最たる例があります。 「障害は個性です」と語る乙武さん――。 みなさんも、どこかで見聞きしたことのある文言かもしれません。 でも、じつは、僕は一度もこのセリフを口にしたことがないんです。 個性とは、「その人らしさを形成する上で、必要不可欠な要素」。 だから、本来の意味で言えば、障害も個性なのかもしれません。 でも、やはり日本で「個性」という言葉が使われるとき、そのほとんどが 肯定的な意味であることが多いように思うんです。 それでも、「障害=個性」と言えるのか? ならば、障害という個性があこがれられたりもするのか? たぶん、答えはNOだと思います。 だから、僕自身は「障害=個性」と言いきってしまうことに、 少なからず抵抗を感じてしまうのです。 Twitterでそんなことを書いていたら、こんなツイートをいただきました。 「じゃあ、乙武さんにとって障害とは?」 僕にとって障害とは、「二児の父」「メガネをかけている」―― そうした要素とならんで、乙武洋匡を形成する数ある特徴のひとつ。 そして。 性格や能力、そして障害も含めた僕自身を形成するすべての特徴を 振り返り、それらを生かして、「自分にしかできないこととは……」と 考えたとき、そこに初めて「個性」が生まれると思っているのです。 僕は、この手足がないという特徴を生かして、多くの人々に 「みんなちがって、みんないい」というメッセージを伝えていきたい。 それは、『五体不満足』から一貫して強く思っていることです。 そうした信念で活動していくことが、僕の「個性」だと思っているから。


『だいじょうぶ3組』解説

ある日、Twitter上でsaerealさんという方からこんなツイートが届いた。 『だいじょうぶ3組』の書評を書いたので、読んでみてほしい――。 そこにあったアドレスをクリックしてみると、そこには素晴らしい文章が。 僕自身がこの本の解説を書くよりも的確なのではと思うほど、 そこには、僕が『だいじょうぶ3組』を通して伝えようとした内容が、 鋭く分析されていた。 saerealさんから特別に許可をいただいたので、当サイトにも 転載させていただきます。 ****************************************************** 本人のインタビュー曰く、ほとんどが実話に基づいているものらしく、読みながら頭の中では赤尾先生を乙武さんに置き換えて読んでいた。 赤尾先生が伝えようとしているフィロゾフィーは、おそらく以下のようなことだろう。 一番目指してがんばる。最初からあきらめないで、一生懸命努力する。 努力の末、結果の差異がでるのは仕方がない。 人にはほかの人よりできることもあれば、圧倒的にできないこともある。 でもそれも個性だから。がんばったのなら、そのままで大丈夫。 登場人物の子どもたちの個性がとても生き生きと書かれていて、本当にこのモデルになった生徒たちを大事にしていたんだなあというのが伝わってくる。 赤尾先生は、「世界にひとつだけの花」が歌っているような、純粋な自己肯定=そのままで君はオンリーワン、というテーゼには徹底的に反抗し、みんな同じようにゴールを目指そう、といった横並び主義、一般的に正しいと信じられている学校のルールひとつひとつに疑問を投げかけていく。 もちろん彼は常にアンチテーゼの変革者だったわけではなく、彼の未経験や未熟さが招いた様々な事件も起こるし、彼はそこで悩み、周りの人に助けられていて、一貫したヒーローでは当然、ない。 でもそうやって自分も試行錯誤していく姿を子供たちに見せることで、先生は従うべき、見習うべきモデルではなく、彼がその教えを自ら体現する人であり続ける。彼の行動を通じて、がんばること、それが認められること、時には失敗したり挫折したりすることがどういうことなのかが表現され、子どもたち自身をできることもできないことも両方ともに、果敢に立ち向かわせていく。 そしてその「結果の差異」を明らかに体現しているのが赤尾先生で、彼ははじめから「僕にはできないことがたくさんある、だから手伝ってほしい」、と明言する。がんばってもできないこと(例えば爪がないからどうしても牛乳瓶のふたが開けられない)、それは彼の個性で、そこでは人の助けを必要とするし、そのできないことを支えるのは周りの人間だ。人はそうしてそれぞれの個性や強さや弱さを認め合いながら、助け合って生きていく。それがクラスであり、人間の共同体であり、社会であるということを、この小さなクラス運営を通じて子どもたちは学んできたように思える。 赤尾先生はできないこと、を体現する一方で、やればできることも体現する。子供たちに負けじと一緒にサッカーに混じり、本気になって戦ったりもする。感動的なのはそこで子どもたちが、「先生は僕たちより早く走れないから、先生がゴールを入れたら2点」というシステムを作るところだ。 これは非常にさらっと簡単に書かれているのだけれど、アファーマティブアクションのようなものを、3組のメンバーが自然に作り出し、それを当たり前のように実行できるのは、すごい。 ツイッターやブログなどを読んでいると、乙武さんの強さや弱さをさらけだすことを恐れない勇気や、それでいての負けず嫌いな感じがでてるところのやんちゃさや、かっこよさなんかが沁み出てくるので、人々はついファンになってしまうと思うけれど、この本もまさにそういう彼のその魅力的なワールドを凝縮したような小説。最初の小説とは思えないほど完成度が高い。描写などもとても自然で堅さがなく、無駄がないので中身は濃いのにさらっと読めて、ぎゅんと沁みてくる。 後に新聞や雑誌のインタビューなどで乙武さん本人が語っているように、ここに書いてある出来事は現実のモデルがある一方で、決して現実自体がこの小説通りの結果をもたらしている訳ではない。そしてだからこそ、この本が小説である価値があると思う。金八先生があれほど人気を博したもの、あんなこと実際には起こる訳ないと思いながらも、彼らが提示した学校やクラスのあり方、地域社会とのつながりみたいなものが人々の心をキャッチして、学校や教育問題に対する一つの参照枠を作り出した。乙武さんが現実の人物だからこそ、この小説で語られた様々な試みや教育の理念はこれからも生き続けるだろうし、彼や周りの人間によって形を変えて体現されていくのではないかと思う。 今回の小説は、学校や学校行事の中、学校からの帰り道(補助の先生との会話)、飲み屋さん、という3つの場所が主な舞台で、それはそれでとても凝縮されて濃い物語だったけれど、もし今度また小説を書く機会があれば、両親や地域社会なども巻き込んだ、大きな舞台での小説を書いてほしいなと思う。 現代の灰谷健次郎になってほしい。


コンドルズ!!

以前からずっと気になっていたコンドルズ。 やっと、やっと観に行くことができました!! 楽しみにはしていたものの、正直に言うと、芸術に疎い僕は、 「コンテンポラリー・ダンスって…何?」と不安もちょっぴり抱いていた。 でも、公演前日、ダンス界に詳しい友人に見どころを聞いたら、 「とにかく頭をからっぽにして楽しんできて」と返ってきたので、 ちょっと安心。肩の荷を降ろして、東京芸術劇場へと向かいました。 結果、圧倒されっぱなしの120分。 本業のダンスあり、コントあり、人形劇あり、映像あり。 途中、バイオリンの演奏だって始まっちゃう。 終演後、まず僕の頭に浮かんだ、素直な感想――。 「文化度がえらく高い人たちの、悪ノリした文化祭」 そのあと食事をご一緒させていただいた小林顕作さんに 誤解を恐れず、その感想をお伝えしたら、 「そう、そう。まさにそのとおりなんですよ!」 きっと、ご本人たちがそれぞれの専門分野を持ち寄って、 楽しみながら舞台をつくりあげていってるんだろうなあ。 コンテンポラリー・ダンスという、一般的にはとっつきづらい分野。 そこに遊び心をいっぱい加えて、上質なエンターテイメント作品に 昇華させたコンドルズ人気の秘密は、この“悪ノリ”精神なのかも!? すっかりコンドルズの魅力に取りつかれてしまったオトタケ、 早速、年末の京都公演に参戦するべく、日程を調整中です!


天才が生まれる日

「乙武さんは、他人に嫉妬とかしなそう」 最近、ツイッターでそんなことを言われました。 たしかに、僕自身が心から毎日を楽しめているので、 あまり他人をうらやんだりすることはありません。 でも、なかには、ちょっぴり例外も。 どうしてもその才能をうらやんでしまう、ふたりの友人がいます。 ひとりは、ドローイングアーティスト・JUNICHI(小野純一)。 彼がまだ小学生だった頃、NHKのドキュメンタリーで取り上げられた 彼の絵と、絵に対するこだわりを見せつけられた僕は、 すぐに彼に手紙を書いた。ラブレターだ。 その想いに応えてくれた彼とは、13歳という年齢差を越えて、 いまでも友情が続いている。 9.11直後、「何か平和のためにできることがないだろうか」という 僕の呼びかけに応じ、ふたりで作品をつくる機会にも恵まれた。 『Flowers』――JUNICHIが描いてくれたイラストのおかげで、 とても伝わる作品に仕上がった。 ふたりめは、染谷西郷。 FUNKISTという7人組のバンドでVOCALを務めているアーティスト。 日本人と南アフリカ人のハーフとして生まれた彼は、恋愛だけでなく、 人種差別や平和や人間愛についても、力のかぎり歌う。 そのストレートなメッセージ性と、彼の真摯な態度は、 聴衆の心をこれでもかとわしづかみにして、離さない。 マカオのライブハウスで初めて彼らのライブを体感した僕は、 その場ですっかり虜になってしまい、以来、5年間ほど、 ずっと彼らのライブに通い続けている。 ふたりに共通するのは、表現者としてこの上なく誠実であること。 あれこれ損得勘定をしてから動いてしまうことの多い僕からすると、 ふたりの作品に向かう姿勢は、心苦しいほどピュアに映るのだ。 僕自身、何らかのメッセージを伝えようとする表現者として、 彼らの存在はあまりにまぶしく、ときに嫉妬さえ覚えることもある。 そして、もうひとつの共通点。ふたりとも、9月17日生まれ。 つまり、今日が誕生日なのだ! 面識はないが、プロゴルファーの石川遼選手も、 なんと9月17日生まれ。なんか才能が生まれる日なのかも。 うらやましいほどの才能を持つ、ふたりの友人へ。 誕生日おめでとう♪


だから、僕は学校へ行く!(文庫版)

新宿区教育委員会の非常勤職員「子どもの生き方パートナー」として、新宿区立の小・中・養護学校を回った経験をまとめた『だから、僕は学校へ行く!』が文庫化。オトタケが小学校教員を志した理由が、ここに! 発行:講談社(2010年9月) 税込価格:500円 購入はこちらから


『だいじょうぶ3組』サイン会開催

オトタケ初の小説『だいじょうぶ3組』出版を記念して、 都内3か所でサイン会を開催することとなりました! 詳細は、下記の通り。 みなさん、ぜひオトタケに会いにきてください(^O^)/ ★9月21日(火) 19:00~21:00 @青山ブックセンター本店(表参道) 「トークショー&サイン会」 ※定員は120名様です。 ※応募方法などは、こちらをご覧ください。 ★9月23日(木・祝) 13:00~ @久美堂本店(町田) ※定員は100名様です。 ※応募方法などは、直接、店舗のほうへご確認ください。 ★9月23日(木・祝) 17:00~ @リブロ池袋本店(池袋) ※定員は100名様です。 ※応募方法などはこちらをご覧ください。 なお、いずれの会も、宛名書き&記念撮影はご遠慮いただいております。みなさまに気持ち良く楽しんでいただくため、ご理解のほどよろしくお願い申しあげます。


イクメン登録証

  厚労省が推進する『イクメンプロジェクト』にて、「イクメン宣言」をしたら、 『イクメン登録証』なるものが届きました!


武田双雲×乙武洋匡『教育対談』 on Twitter②

Twitter上で行われた書道家・武田双雲さんとの教育対談。 それでは、2日目スタート~♪ 双雲:おはようございます。今日もよろしくお願いします(^O^) 早速ですが、乙武さんが感じる今の学校の問題点はどこですか? 乙武:過剰な「温室栽培」となってしまっている点ですかね。わずかな傷さえつけることを恐れて、何重にもビニルハウスで囲ってしまっている。だから、子どもたちは自分の欠点や短所に気づく機会を奪われているように思うんです。たとえば、バレンタインデー。学校に(その日だけでも)チョコを持ってきてはいけない理由を聞くと、「もらえない子が傷つくから」。でも、僕はそうした傷って必要だと思うんです。「あ、俺ってモテないんだ」と気づき、「じゃあ、モテるためには…」と自分を磨く。 双雲:なるほど。 乙武:運動会でもそうですよ。同じようなタイムの子をならべ、あまり差がつかないように配慮する。足の遅い子が傷つかないように、と。それから、教師は子どもたちに「お父さん、お母さん」ではなく、「おうちの人」と言うように指導を受ける。これは、「片親しかいない子どもが傷つかないように」という理由からです。 双雲:僕の教室でも、字がうまく書けなくて悔しくて泣く子がたまにいますが、その後、必ず飛躍します。弱さと向き合えた子は強くなっていくのを目の当たりにしてきました。弱さと強味をしっかり伝えるのも先生の醍醐味かと。 乙武:挫折から得られるものは、決して小さくないですね。まわりの大人は、その子が挫折でぽっきりと折れてしまわないようフォローしてあげること、そして、その挫折からの学びがなるべく大きなものとなるような示唆を与えてあげることが重要な役割なのかなと。 双雲:小さな挫折と小さな成功をいっぱい体験させる環境づくりも大切なことかもしれませんね。 乙武:だけど、学校は少しでも傷を与えることに憶病になっている。その結果、必要以上の温室栽培に。でも、社会に出たら、そんな「ビニルハウス」ないでしょう。他人との差をイヤというほど感じながら、ありのままの自分で勝負していくしかない。その「ありのままの自分」がどんな人間なのかを知るためにも、ある程度の傷は必要ではないかと思うんです。 双雲:僕の生徒さんのなかにも、不登校や障害を抱えた子供たちと日々向き合っている先生いますが、そういう子たちはいやがおうにも普通の子と比べられてるから、逆に傷に強い子が多いと感じているそうです。 乙武:なるほど、興味深い…。でもね、学校側の姿勢もわかるんです。いまは、わずかな傷にも過剰な反応を示す保護者がいて、学校を飛び越えて、じかに教育委員会などへクレームを入れられる。一度、そうなってしまうと、「再発防止のために」と何度も会議を重ね、レポートを書かなければならない。そうなれば、子どもと向き合う時間がさらに奪われてしまうから、結局は「クレームの対象」となりそうな要素は、できるかぎり排除しておこうとなる。学校が「無難に、無難に」と志向してしまう背景には、こうした事情があるんです。 双雲:では、極度の温室栽培から抜け出すために、今日から誰が、何をしていけばいいのでしょうか。 乙武: 「温室栽培」から脱却するため、僕はまず保護者との信頼関係を築くことに努めました。小渕元首相の「ブッチホン」ではないけれど、よく電話をかけるようにしたんです。担任からの電話は、ふつう何かトラブルが起こったときにかかってくるものだけど、僕は子どもの頑張りを伝えたくて、しょっちゅう電話をかけていました。 双雲:小学校の先生をされている僕の生徒さんが、「PTAと教育委員会への対応が大変だ」と歎いてましたが、乙武さんは、そのPTAにあえて電話を? 乙武:「○○ちゃん、今日ずっと苦手な逆上がりの練習をしていたんですよ」とか、「○○君、今日は△△委員に立候補してくれたんです」とか――結局、逆上がりができなくてもいいんです。委員がほかの子に決まってしまってもいいんです。僕は結果だけでなく、その子の頑張りや意識の変化を伝えたかった。結果だけなら、通知表で十分ですから。 双雲:乙武先生、すごい行動力!保護者の方々の反応はどうでした? 乙武:保護者のみなさんは、最初のうちはさすがに戸惑っていました。「本当はうちの子が何かしたんでしょう?」と信じてくれなかったり……(笑)。でも、僕が本当に頑張りを伝えるためだけに電話しているのだとわかると、とてもよろこんでくださるようになった。そして、僕は電話を切るとき、最後には必ずこう言うようにしていたんです。「いっぱい褒めてあげてください」って。 双雲:それはステキな言葉ですね。 乙武:こうして信頼関係を築いておくと、いざ僕が「従来の手法とは異なる指導」をしても保護者のみなさんは信じてくださるんです。「あの先生なら、きっと子どもたちのためを思っての指導なのだろう」と。信頼関係がないまま、他の先生とはちがう、“変わったこと”をすれば、やっぱり保護者だって不安に思うはず。 双雲:教育に近道はないのですね。 乙武:学校に疑心暗鬼な一部の保護者。その保護者の声に脅えて、硬直化してしまった学校。状況は、決してかんたんじゃない。そんなのわかっているけど、あきらめてタメ息ついてるより、僕は少しでも前に進みたかった。保護者への「OTOフォン」は、そんな想いから始めたことでした。 双雲:1つ1つやれることを精一杯やっていく。素晴らしいですね。ただ、多くの先生が一生懸命やっていても空回りしてしまう場合も多いと聞きます。 何かそういった先生に伝えてあげられる言葉があるとしたら何でしょう。コツというか。 乙武:たった3年しか経験していない僕が先生方にアドバイスなんておこがましいけれど、あえて言うなれば、教育界ではない人と積極的に交流を図ること、かなあ。狭い世界に閉じこもっても、何もいいことはないから。 双雲:なるほど。では、乙武さんの教育現場での失敗談を教えて下さい。ちなみに僕は失敗しまくり。 乙武:音楽の先生が出張でいないのに、それ忘れてて子どもたちを音楽室に送り出しちゃったとか、そんなレベルの話ならいくらでもありますけどね(笑)。でも、双雲さんのご質問の意図はそういうことじゃなく、もっと本質的なことですよね…。 双雲:フォロワーのみなさんから、綺麗事とか薄っぺらいと言われないような展開にしましょう(笑) 乙武:僕のクラスに、何度注意しても同じ失敗を繰り返す子がいて、そのたびにきつく叱っていたんです。でも、あとになってわかったことだけど、その子は認知の仕方が特徴的で、他の子と同じように伝えても、理解がむずかしかった。それを知ったときは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました……。 双雲:乙武さんは、そういうお子さんにどう対応されたのですか? 乙武:経験豊富な養護教諭(保健の先生)のアドバイスに基づき、「聞いたらすぐメモに取る」など、いままでとは異なるいくつか方法をその子に提案しました。数ヵ月後、その子は劇的に伸びていきました。 双雲:それはすごい!あ、そろそろ夜も更けてきましたね。ここで一旦、対談を終了しましょうか。 乙武:そうですね。今日も双雲さん、みなさんと有意義な議論ができたことに深く感謝しています。僕は担任として、23通りの個性、23通りの家庭環境しか知ることができなかったけれど、みなさんが「うちは~です」とお話しくださり、たいへん勉強になりました。 双雲:本当にその通りですね。忌憚ないご意見をくださったみなさんに深く感謝致します。 乙武:また、僕や双雲さんのツイートに対して反論くださったり、「わかってない」などとご意見くださった方も多数いらっしゃいましたが、それも当然のこと。とくに「正解」がない教育問題では、多くの人が意見をぶつけ合い、建設的に解決への道を探っていくのが大事なことと思っています。だからこそ、異論・反論のツイートにも深謝。 双雲:そう、僕らはまだまだ固い。もっと柔らかくなるよう成長していかなければ。 乙武:その意味でも、こうしてみなさんと議論するきっかけを与えてくださった双雲さんには深く感謝しています。僕らの対談が、みなさんの教育についての関心を深めるきっかけとなったら、これ以上なくうれしく思います。本当にありがとうございました! 双雲:貴重な体験を熱く語ってくれた乙武さん、ありがとうございました。いつかまた!


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